SP-E1a

〜MoonLightの歴史〜
多くのレイヴンを魅了してやまない、”MOONLIGHT”の名を持つレーザーブレード、通称「月光」。
その成り立ちを辿ります。

初代からナインブレイカー、そしてフォーミュラフロント。
形、性能は時代と共に変化しましたが、
青い刀身に、驚異的な破壊力は引き継がれ、尚、カリスマ的存在の「月光」。
その成り立ちを辿ってみましょう。
その歴史は、FROM SOFTWAREのゲーム会社としてのスタート地点までさかのぼります。

受託アプリケーション製作会社だった我らがFROM SOFTWAREが、ゲーム会社としてのスタートを切ったのは、 PSの発売がきっかけでした。 PSのポリゴン処理能力に着目したFROM SOFTWAREは、「受託ではなく、自分たちのゲームを作ってみよう!」 とフルポリゴンのRPGの製作に乗り出したのです。 神社長の「フルポリゴンのRPGを最初に出すのはうちだ!」の言葉を受けて。
1994年。そして生まれたのが、”KING'S FIELD”です。
フルポリゴンのRPGで、擬似3次元空間の中でキャラを自分で操作します。
操作法はACのB操作とほぼ同じで、コクピット視点でブーストダッシュとジャンプがないと考えるとぴったりするでしょう。 (Xボタンがメニューになっているのです。)
世界観もストーリーもよくわからないまま、剣と魔法で敵を倒しながら進みます。
”KING'S FIELD”のゲーム中、一振りの剣を手に入れます。
名前は”ドラゴンソード”。
墓の前に捧げてあるのです。
この”ドラゴンソード”は、妖精「ミーリア」により光を取り戻し、青い刀身の聖剣に変化します。
これが、世の中に初めて登場した「ムーンライトソード」です。
圧倒的な攻撃力を持った最強の剣でした。
レベルを上げていくと、△→□をタイミングよく押すことで光波を飛ばせるようになります。
青いブーメラン状の光波が稲妻を伴って飛び、着弾すると大爆発します。
「剣魔法」と呼ばれますが、この攻撃力が絶大で、ラスボスを除いて、この一撃に耐えられる敵はいませんでした。

1995年。”KING'S FIELD”の発売から間もなく、続編の”KING'S FIELD II”が発売されました。
フロムの名を世に知らしめた逸品で、フロム史上最高クラスの名作と言っても過言ではありません。
1996年、さらに完結編の”KING'S FIELD III”が発売され、フロムのゲーム会社としての地位を確固たる物としました。
IIとIIIでは、初代でよくわからなかったストーリーが作りこまれ、 その中で、「ムーンライトソード」の生みの親も登場します。
赤い一つ目の、
いえ、あなたではありません
黒竜、「ギーラ」です。
主にIIとIIIで綴られた、ムーンライトソードにまつわるお話を、少しお聞きください。
〜ヴァーダイトの物語〜
その昔、大地の神「ヴォラド」が二つに分かれ、黒竜「ギーラ」と白竜「シース」が生まれました。
ギーラとシースは対立し、互いを倒すため、それぞれ聖剣を生み出しました。
ギーラの剣を「ムーンライトソード」、
シースの剣を「ダークスレイヤー」といいました。

←ムーンライトソードとダークスレイヤー。互いに拮抗する、最強の聖剣。
”KING'S FIELD”の主人公、「ジャン」は、王家の墓所からムーンライトソードを持ち帰り、王座に着きました。 ムーンライトソードは国宝として大切に納められました。 一連の戦いからジャンの力を認めたギーラは、離島にジャンを呼び寄せて取り込もうと考え、使い魔を送ってムーンライトソードを奪いました。 ところが、ムーンライトソードの奪還に島へ赴いたのはジャンではなく、隣国の王子であり”KING'S FIELD II”の主人公、「アレフ」でした。 アレフはダークスレイヤーを手にし、激闘の末、ギーラを討ち倒しました。ムーンライトソードはダークスレイヤーと共に、再び王国に納められました。

←KFIIラストステージ、黒竜「ギーラ」と、奪われたムーンライトソード。
ギーラを倒す前にこのムーンライトソードを取ってしまうと、なぜかゲームクリアできなくなる(!)
ところが、この行為が厄災を呼んだのです。
ギーラが倒されたことで力を増大させたシースは、病死したジャンを操り、王国を恐怖に陥れます。 ムーンライトソードは折られ、王国は魔物で溢れました。 立ち上がったのは、ジャンの息子であり、”KING'S FIELD III”の主人公、「ライル」です。 ライルはムーンライトソードを復活させ、操られた父を倒し、遂にシースを滅ぼします。

←KFIIIラストステージ、白竜「シース」。竜というより…なんでしょうね、これは(汗

ギーラもシースもどちらも正義でなく、「聖剣」といいつつ、ムーンライトソードもダークスレイヤーもどちらも災いの元となるあたり、 流石はFROM SOFTWARE、といったところでしょうか。このへん、レイヴンの正義なき傭兵稼業に通じるものがあるでしょう。
(おまけ)物語を彩る登場人物たち
1)ミーナ・クー(III)…シリーズを通して、唯一ともいえる正統派ヒロイン。だが、他の登場人物と同様、なんの断りもなく突然死んでしまう。嗚呼、無情。
2)黒魔導師(I)…どうやら悪玉のようなのだが、何者なのか最後までわからない。初代KF最大の謎。
3)メレル・ウル(II・III)…シースの加護を受けた伝説の剣士だが、ギーラの加護を受けた魔人、「ガルス・フィー」に破れる。主人公に武具を残してくれるが、後にアンデッドとして復活する。
4)ミーリア(I・II・III)…ギーラの使い魔。三作品にもわたって登場するキャラとしては、ヴィクセンと並んで二位。
5)オルラディン(III)…大魔導。彼の弟子、「ツェデック」と「シュドム」の残した敵やアイテムは、シリーズを通していたるところに出現する。
6)大クラーケン(II)…最凶最悪の敵。中ボスクラスの強さを誇るが…、なんでこんなやつがゲーム開始直後にいるんだ!?

て、KING'S FIELDシリーズ3部作を完結した我らがフロムは、こう考えました。
「KING'S FIELD以外のゲームも作ってみよう。」
1997年。そこで登場したのが、”アーマード・コア”でした。
記念すべき、初代アーマード・コア。
KING'S FIELDの「鎧と武器の着せ替え」が、そのままパーツアセンブルとなった印象です。

←初代AC、ミッション「遺跡強襲」。

どことなくKING'S FIELDを思わせるステージで、隕石魔法よろしく、謎の岩が飛び交うマップです。
その遺跡の最奥に、ACで初めての「月光」が隠されていました。

”MOONLIGHT”の名を持つ青い刀身の最強剣の登場に、大喜びしたKING'S FIELDフリークは多いことでしょう。
しかも、この「月光」、強化人間を使うと、KING'S FIELDとほぼ同じコマンドとタイミングで光波を飛ばすことができました。 剣魔法の時と同様に絶大な攻撃力を持ち、相手の防御力に関わらずAPを一律5000持っていくという、恐ろしいものでした。
対戦を考えると滅茶苦茶ですが、KING'S FIELDからの成り立ちを考えると妥当な性能といえます。
ACもシリーズが続き、「月光」も変化しつつも引き継がれました。
「月光」こそ、我らがフロムのゲーム会社としての原点に通じる、象徴的パーツなのです。


参考文献:Verdute Trilogy Perfect Guide キングスフィールドI・II・III聖典(ソフトバンク パブリッシング株式会社)

特別コラム
月光-Sword of Moonlight

”KING'S FIELD”に次ぐ作品として世に生み出され、今やFROM SOFTWAREのフラッグタイトルとなった”アーマードコア”。
その世界でもまた「最強の出力を持つレーザーブレード」という肩書きを持って息吹を受けた「月光」。
今回はその「ACにおける月光」を少し掘り下げて振り返ってみたいと思います。
この機会に、月光の歴史を感じて頂ければ幸いです。

旧作においてはやや伝聞の知識が混じりますことを予めお詫び致します。


〜絶対破壊の蒼剣〜
初代ACにて、月光は最初偶然発見されたと言われています。
背後から火球の思わぬ不意打ちを受け、落下した先に安置されていた周囲に不釣り合いな金属体――。

そのブレードは重量こそあるものの、月明かりそのもののような青い刀身はあらゆる敵機を一閃の下に叩き伏せ、時にはACすらも一撃で両断するほどでした。

中世の聖剣「月光」が世界観を超越し、遙かな未来世界に顕在した瞬間です。


が、生誕直後のKF同様、その頃のACはまだ「開拓期」。ブレードは実戦に耐えぬものと見なされていました。
時代の主流は派手で火力のある武器腕やキャノンで、月光を含めブレードはどれも「近距離での補助武器」と他武器の陰に隠れる形となっていたそうです。
現在ではブレードにとって不可欠とも言えるブレードホーミングや空中補正すらも、当初は「空中では流石に当たらないだろう。」というフロムの見解により付加された機能でした。


しかし、そんなブレードにも転機が訪れます。
フロム主催の公式大会「ミッションイレギュラーハンティング(一橋大学にて開催)」です。
カラサワや01QLタンクなどが闊歩する中、とあるレイヴンが軽量二脚に512ハンドガンと351ブースタを携えて出場。
ハンドガンによる固めと最高出力ブースタによる強力なブレホを利用してカラサワを見事撃破し、会場のどよめきを誘ったと言われています。
さらに、強化人間部門において「ブレオン+205-SFミサイル」という機体が”非強化人間にも関わらず”優勝という快挙。

この時、俗に「剣豪」「ブレーダー」と呼ばれる戦術カテゴリーが一般に認知されたと言われています。

そして、月光はその圧倒的威力と消費効率により一気に大躍進。
空中斬りで大逆転を見込める上、ブレードホーミングを利用した移動にも申し分なく、「左は月光」とまで言われたそうです。

その後も戦術研究は続き、「固め斬り」からさらに「メテオ」「側面斬り(トルネードスラッシュ)」などに代表される多くの戦術が生み出されていきました。


〜進化と調整〜
新プラットフォーム「PS2」の発売に伴い、ACも新たな時代を迎えました。”アーマードコア2”の始まりです。
初代ACの時代から60年もの時が流れ、ACは新たな規格へ移行。新たな戦場となったのは砂塵の焦土、火星。
今度の月光は星すらも飛び越えました。

ディソーダーの巣の深部――それはまたも台座の上に鎮座していました。
重量増加、威力低下、消費増加と大幅な調整を受け、過去放っていたイレギュラー的側面は随分と息を潜めましたが、
変わらず十分に高い威力とさらに美しさを増した刀身に、レイヴンは再び心を躍らせました。
同時に、リーチの延長に対するホーミングの弱体化、空中補正の大幅な縮小、新要素「オーバードブースト」の登場などにより、対戦においても大幅な変革が起こったと言われています。
また、現代のブレード戦術における花形、「OB斬り」もこの頃創始されました。
ホーミングの弱体化や射撃補正向上などの余波を大きく受けた旧来のブレーダーは、必死の練習を重ねたそうです。


〜「最高」か「最強」か〜
AC2のシステムを大幅に改善し、豊富なミッションと追加パーツを抱えてリリースされた”アナザーエイジ”。
今でも多くのファンに支持される本作は、月光にとって一つの大きな転機となりました。

そう、「ダガー」の登場です。
ほんの僅かの差ではあったものの、ダガーは月光の代名詞であった「最高威力」を奪い去りました。
その上、月光より200以上も軽量という大きなアドバンテージまでも所持。
この「月光=最強」の方程式の唐突な崩壊に、驚愕を覚えたブレーダーは少なくなかったそうです。

しかし、ダガーが月光から奪えたのはただその2つだけでした。
ダガーはそれらの代償として、多量の消費と長いリロード、極端に短いリーチという弱点を抱えていたのです。
リーチによる多段ヒット確立差などの実戦能力を考慮すると、月光の地位は変わらず健在でした。

極限の一発を狙うか、安定した破壊力を望むか。
ここにダガーと月光は「最高威力か 総合最強か」という形で立場を二分したのです。


〜金色の柄 再来〜
シリーズも第3部に突入し、世界観・パーツデザインと共に月光もリニューアル。
レーザーブレードとしての第三代目月光は、元祖をモチーフとした姿に立ち返りました。
管理者の巨大兵器を単機で撃破した特別報酬として扱われたそれは、旧代のムーンライトソードの「柄」を思わせる黄金のブレードでした。
若干性能も改良され、射撃兵器の全体的な命中率低下もあって月光の価値は再び向上。
あらゆる装甲を引き裂くその美しい残光は、輝かしい過去を彷彿とさせました。
また、OBではなくあえて「イクシードオービット」を搭載し、ホーミングを利用してEOをねじり込むという戦術も生まれました。
当時はEOと月光を用いて、鬼神の如き近接戦闘を行った機体が存在したとも言われています。


しかし、この頃からある予兆が始まっていました。
やや精度が落ちたホーミング。小さくなった当たり判定。新要素「左銃」の登場――。

この時点で既に、幾分の予見ができたのかもしれません。


次に訪れる、もう一つ最大の転機が。


〜時代の流れに〜
悪い予感ほどよく当たる。そんな格言が恨めしくなる時でした。
新作”AC3サイレントライン”でブレーダーを待ち受けたのは、大量の左銃だったのです。
一挺では考えられない火力。通称「Wトリガー」は信じられない速度で広まりました。

――その圧倒的な弾幕には、月光の力を持ってしても抗う事はできませんでした。
渾身の力で弾丸の雨を掻き分けようとも、その手が相手に届く頃すでに自らには刃を振る力もない。

それはさながら、近代軍に敗れた武士のようでもありました。


そして、改革、原点回帰を唱えた次回作。
それは月光のみならず、全てのブレードにとって、最後にして最大の転機でした。


〜失われた蒼光〜
数々の右往左往の末、生み出された新作”ACネクサス”。
ゲームシステムの根幹にまで立ち入って大幅な調整が行われた今作は、荒削りなものの前作までの不満点を多く解消し、今後の可能性を感じさせる一作となりました。

しかし、その中で唯一、ブレードのみは時代に拒絶されたようでした。

ホーミングの消滅――。

動揺を覚えなかったブレーダーは恐らく皆無であった事でしょう。
急激に低下した命中率はかつてない大きな波紋を生みました。

それだけでは終わりません。ダメ押しに消費までもが膨大と化していたのです。
特に月光のそれはあまりにも酷なもので、なんと従来の約4倍という過大な重荷を背負わされていました。
一振りしただけで、まるで大型プラズマキャノンかのように大量のエネルギーを貪るそれに、愕然としたブレーダーは数知れません。

グラフィックエフェクトが圧倒的に進化し、滑らかさを増した残光。
しかし、その美しい輝きの中に、かつての鋭さが見える事はありませんでした。

NXをベースに格段に磨き上げられた最新作”ACナインブレイカー”では、ささやかな救済措置としてリーチ延長が施されていました。
回避率の向上や熱仕様の変更などにより相対的にも価値は向上しましたが、未だ苦しい立場に違いないのが現状です。



〜最後に〜
「月光は無茶苦茶に強くてバランス崩壊パーツでもいいじゃないか」
各所にてよく見かける要望です。BBSの要望スレッドなどを見ると、まるで申し合わせたかのように最低一つは書き込まれています。
率直に申しまして、SL以降の”アーマードコア”における月光は強いとは言えません。
フロム作品史上、最も弱い月光と言っても恐らく過言ではないでしょう。

――しかし、どうでしょう。
そうなったら確かに、再び「左は月光」の時代が来るかも知れません。
ですが、それはまた新たな虚しさを生みはしないでしょうか?
その「完璧さ」ゆえ、途方もない空虚感に包まれるのではないでしょうか?

他のゲームならばそれも許されますが、”アーマードコア”においてはズレた発想ではないかと自分は考えます。
ACは一人でプレイするのも当然ですが、同時に「他との競合」を重視したゲームだと思います。
作を重ねるごとに行われるバランス調整を鑑みれば、例えACにおける対戦の発端が「おまけ」だったとしても、これは否定しようのない事実と言えるでしょう。

ならば、何故ACの月光は弱いのか。

それだけ、フロム社も「AC」という作品に対して、「月光」という存在に対して真摯である、という事ではないでしょうか?
作品のスタンスに合わせ、単純性能ではなく、正統な実力のぶつかり合いをもってして勝負を決すべきだと。
その中では「月光」すらも例外ではない。そういう事なのではないでしょうか?

自社のシンボルにも関わらず、他のパーツと同様にしっかりと調整を行う。
それだけの心意気に対し、「バランス崩壊させろ」などというのはとんだナンセンスではないか。
自分はそう考えています。

「最高の性能を持った重剣・・」。
月光の名を冠する以上、そうあり続けて欲しいというのが自分の切なる願いです。
そのためには無論、次回作以降の調整に大いに期待を寄せたいと思っています。
これだけの事をやってくれている会社なら、いつかは必ず達成してくれると信じているからです。



月光は「最強」ではありますが、「無敵」ではありません。
どのような形であれ、所持者に対して何かしらの代価を要求します。

KFやその他作品では相応の”入手のための労力”ならば、ACにおいては相応の”技量と努力”を所持者に要求する。


正統な代価を以ての正統な最強・・・・・・・・・・・・・・


それこそが、月光のカリスマ的な魅力の正体なのではないか。
これが、自分の結論です。


1/23/2005 BloodyBlueさん